ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」レポートVol.1

沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」も2回目になりました。1月から3月までの間で約2ヶ月間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展示いただく企画です。 今回滞在制作いただいた作家の外山奏瑠様と、作家を受け入れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝一様にお話を伺いました。第一弾として、今回は外山さんのインタビューをご紹介いたします。


-今回滞在中に描かれた作品のモチーフについて教えてください

この度このような機会をいただいてせっかく沖縄に来られたので、この土地にちなんだものを描きたいなと思いました。釣竿を持った生き物を運んでいるこの鳥たちはイソヒヨドリと言います。お腹がオレンジで、頭が青い沖縄の野鳥です。朝、目が覚めてベランダの窓を開けると、東京でいうスズメや鳩、カラスのようにその辺にいるんですよ。(画像❶)


(画像❷)この作品は、美ら海水族館に併設されている熱帯ドリームセンターに行った時に、その風景からインスピレーションを受けました。実際に見た景色と厳密には異なるのですが、熱帯ドリームセンターは水辺や温室があって、いろんな植物が見られるんです。普段から水面の光やカーテンからの日差しに自然と心惹かれます。熱帯ドリームセンターでも光が当たるところに引き寄せられてしまいました。あくまで自分には光が当たっていないということも重要なんだと思います。


(画像❸)ここへ来て最初に描いた作品です。ゴーヤにも見えなくはないと思いますが(笑)
これまで緑色の作品を描くことが少なかったのですが、沖縄の緑が素敵だったので取り入れてみようと思いました。作品に登場する生き物たちは、どこからやって来るのかわからないのですが自然と生まれてきます。というよりも既に存在している、と或る世界から聞き出しながら描いているところがあって。タイトルをつけることもすごく好きなのですが、そういうのも描いている途中に絵と対話することで出てくることが多いです。

(画像❹)ユニコーンが上の方で寝ている作品です。直接沖縄に関係があるテーマではないかもしれませんが、東京の生活ではできなかった、のびのびとした環境でリラックスして絵を描けています。そういったことを絵に表せたらいいなと思いました。これだけゆったりした時間がなかったらこの絵を描けていなかったと思います。




-画材について教えてください

顔彩という日本画の固形絵の具を使っています。絵の具は顔料の粒子が集まってできているのですが、粒子の大きさがまちまちで、青い絵の具だったら粒子が大きかったり、逆に細い粒子の絵の具があったりします。顔彩の白い絵の具は胡粉と言って、貝殻を細かく磨り潰した粉が使われていて、それらを混ぜた時に起こる反応がすごく面白いんです。描く過程で絵の具の粒子が浮き沈みすることによって、独特な表現ができるのですが、全てが自分の思い通りに行くわけではないことも楽しんでいます。こういう風に描きたい!という元々の想定より、何段階も昇華された作品が目の前に現れたりして。それも絵を描くことの楽しみの一つです。



-ホルトノキでの生活はいかがでしたか?

ホルトノキでの生活は楽しいです。良いリフレッシュになりました。また来たいなと思っています。 絵を描く日はとことん描くし、逆にインプットに重きを置いて何も描かない日もありました。長尾橋ややんばるの森に行ったり…宿に帰ってそこで得たものをつまみにお酒を飲んで、そうして聞こえてきた声をヒントに絵として描き起こしていく感じです。
ホルトノキのオーナーの滝本さんと奥様とは、一緒にお酒を飲んだり沖縄の色々なところに連れて行っていただいたりと、まるで息子のように接してももらいました。



-ホルトノキでの制作と普段の制作との違いは?

沖縄にいると自分のちっぽけさをいい意味で実感します。自分一人では太刀打ちできない自然の壮大さを、青々とした海から、珊瑚の砂浜から、茂った木々から、街頭のない道路から思い知る。そうした環境に置かれている自分に、絵の力で何ができるのかを考えさせられます。 あとは、普段の制作ではどうしても「ここからここまでしか描けない」という時間の縛りがありますが、ホルトノキでは時間の縛りがありません。普段より何層も色を重ねて描くなど、時間をかけて惜しみなく制作ができます。



-ここで滞在制作したことで、ご自身の制作に変化はありそうですか?

まだ実感はありません。普段の制作でも展覧会で作品を見てもらうことで、自分では気付けなかったことを感想としていただくことを楽しみにしている節があります。なので今回も、沖縄での滞在で外山奏瑠という人間にどんな変化があったのか、展示を見ていただいた方からお話を聞くのが楽しみです。



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