アーティストインレジデンス 宮崎・えびの市で初開催!ヨロコビto×アグリテル 2025年度レポートVol.3〜Terra 代表 池内ご夫妻へのインタビュー〜


「農業体験」と「宿泊」を掛け合わせ、“最⾼にうまい”を体感できる宿泊施設を運営する株式会社Terra様とヨロコビtoとのコラボにより、今回初めて宮崎県・えびの市での「アーティストインレジデンス」が実現しました。
2025年5⽉、1名の作家が宿泊施設「アグリテル」の離れに約1か⽉滞在し、制作を⾏いました。その後1年間、作品は「アグリテル」に展⽰されます。
第3弾では、作家を受け⼊れてくださった株式会社Terra代表の池内学さん・優希さんご夫妻にお話を伺い、そのインタビューをご紹介します。




―アーティストインレジデンスが実現した経緯を教えてください。

滞在制作のお話をヨロコビto代表の柏本さんからお聞きして、「めっちゃ⾯⽩そうだな」と思って、弊社の宿泊施設・アグリテルでもできないかと話したところ、柏本さんが前向きに「できる可能性がありますよ」と⾔ってくださったことがすごく嬉しくて。そこから実現に向けて進めていった感じです。
もう1つのきっかけは、Terraのホームページやポスターで⻄⾕さんの作品を使わせていただいていることです。その作品がどれもすごく素敵で、そんな作家さんをうちでお迎えできたらすごく光栄だなと思いました。




―滞在中の⻄⾕さんのご様⼦はいかがでしたか?

優希さん:えびのにお越しいただいてすぐ、⼀緒にランチに⾏きました。そのあとは⾃由気ままにえびのを拠点に近隣地域まで⾜を伸ばして、⼿つかずの⾃然に触れながら制作活動を⾏っていただきました。⻄⾕さんはとても物腰が柔らかくて、描かれている絵の雰囲気にぴったりの⼥性だなと思いました。

池内さん:初⽇に⾏ったカレー屋さんで、けっこうプライベートな話をしちゃったんですよね。息⼦さんも来られていたので、息⼦さんのことや、⻄⾕さんの⽣い⽴ちの話も聞かせてもらいました。「すげぇ⼤変だったんだな」っていう話もあって。柏本さんの話でも盛り上がりました。
滞在中は、⻄⾕さんのFacebookの投稿を⾒ながら「あ、今ここいるんだ」って思ってました。⻄⾕さんが海で楽しそうにしている写真を⾒て「めちゃくちゃいいですね」ってコメントしたら、「仕事します。すみません」って返ってきて(笑)。
でもね、「描かなきゃ」「仕事だ、納品しなきゃ」っていう気持ちにはなって欲しくなかったんです。とにかくのびのび過ごしてほしかった。やっぱり「居⼼地よかった」って思ってもらいたい、というのがすごくあったんですよね。でもいざ作品を⾒たら「めちゃくちゃ描いてたんじゃん、めっちゃ仕事してる!」って思いました(笑)。




―⻄⾕さんの作品の魅⼒についてはどう感じられましたか?

池内さん:わかりやすい絵ではなくて、ちょっとカオスな感じもあるんですけど、でもそれが癖になるんですよね。それがすごく好きになりました。

優希さん:⼀⾒すると普通の⾵景画なんですけど、よく⾒るとその中にシュールな動物がいたり、⼈間がいたり、全然違う世界のいきものやモチーフが混ぜこぜに描かれていて。その世界観がとっても⾯⽩くて好きですね。えびのの⾃然にはない⾊が⼊っていたりするんですけど、それがなぜか⾃然に溶け込んでいて、そこも魅⼒だなと思っています。


―滞在中の作品の中で、お⼆⼈のお気に⼊りはありますか?

優希さん:松形邸の⼤⽊を描いた作品です。松⽅邸のシンボリックな⽊を、こんなにカラフルに描いてもらえるとは全く想像していませんでした。

池内様:僕はこの“トマトちゃん”ですね。トマト農家さんがこの作品を⾒たら、きっと涙を流して喜ぶと思ったんです。「あなたのトマトが美味しくて、こんな素敵な作品に描かれましたよ」ってしっかり伝えられるのが嬉しくて。この絵が巻き起こすインパクトって、すごく⼤きいと思っています。



―アーティストインレジデンスで、滞在作家に望むことは?

池内さん:絵を描いてほしい以上に、まず“整ってほしい”という思いがありました。えびのに来ることで、⼼が落ち着いたり、⾃分を取り戻してもらえたらいいなと。やっぱり都会の⽣活とは時間の進み⽅が全然違うと思うんですよ。普段は「ちゃん納品しないと」とか、締め切りに追われることも多いと思うんですけど、ぶっちゃけ僕はここではそれを守らなくていいと思っていて。 作品をたくさん描いてもらうよりも、とにかく“ゆったり過ごしてほしい”という気持ちが⼀番でしたね。

優希さん:「えびのの⾃然」から受けるインスピレーションで、思うがままに⾃由に描いていただいて、どんな作品ができるのかなって、すごく楽しみにしてたんですよね。実際に完成した作品は本当にカラフルで、⾒ていて楽しい絵ばかりで…。えびのの⾵景なんだけど、まるで異世界のようで。⻄⾕さんの⽬には、こういうふうに映ったんだなぁと新鮮で驚きました。




―お⼆⼈にとって、えびのの魅⼒は?

池内さん:妻は去年の夏まで、えびのに全く来ようとしなかったんですよ。

優希さん:本当に興味がなかったんです(笑)。でも⼀度来てみたら、⾃然の綺麗さとか、のんびりした雰囲気がすごくいいなぁと思って。⼈ものんびりして、ポジティブで明るくて、細かいことに気にしないおおらかさがあるんです。
あとはご飯のおいしさですね。⽔がきれいで、お⽶も野菜もおいしい。しかもそれを作っている農家さんの顔も知っているから、余計にそのおいしさが際⽴つんだと思います。それから、観光地化されてないところも好きです。これだけ⾃然が豊かで天然の“観光資源”みたいなものがあるのに、リゾート感はなくて、⽇常の中に⾃然が溶け込んいる。それが魅⼒だと思います。


池内さん:そうですね。えびのは、お客さんとサービス提供者とを分けていないと感じがすごくあるんです。観光地って、「来た⼈が⾒たい景⾊」を作っているところが結構多いと思うんですけど、えびのはそうじゃない。⾃然体で「来たらいいじゃないですか」みたいな雰囲気なんですよ。地元の⼈も登⼭などで⾃然を楽しんでいて、⾃分たちで町をつくっている。だから無理してキャパ以上に⼈を受け⼊れようとしない。がめつくない、というか。「まあ、できることはやりましょうよ」という空気があるんですよね。東京のようにシティ化していくと、それは資源になっていくけれど、でもそれだけじゃ⾜りない。その“ゆるさ”が、えびのの魅⼒だと思います。

優希さん:そういう意味では、アグリテル⾃体もすごく⾃然体なんですよね。お客さんも、⼀緒にこの宿を育ててくれている感じ。今回の⻄⾕さんのアーティストインレジデンスも、その流れの中の⼀つの位置づけとしてあるんじゃないかなと思うんですね。




―実際に作家を受け⼊れていただき、アーティストインレジデンスについて感じていることを教えてください。

池内さん:最初の滞在作家さんが⻄⾕さんで本当によかったなと思っています。もっとたくさんの作家さんに来てほしいですね。経営者としても、画家の⽅々への物品提供や宿泊・レンタカーの提供は、経済的にも⼗分ペイすると思っています。でもそれ以上に、満⾜度がとても⾼いんです。やる価値がある取り組みだと感じています。

優希さん:ここにはいろんな地域から不特定多数のお客さまが来られるので、来るたびに違う作家の作品が飾られていたらそれも楽しみのひとつになると思うんです。季節ごとに施設の彩りが変わることにで、場所の魅⼒がもっと広がっていくんじゃないかなと感じています。


池内さん:アーティストインレジデンスは、いろんな地⽅で有効な打ち⼿になると思っています。作家さんがここで過ごしたという「事実」そのものが重要なんです。滞在の時間が作家の⾎⾁になっていくし、ファンの⽅にとっては「その作家が過ごした場所に⾏きたい」と思うきっかけになる。“デスティネーション戦略”と呼んでいるんですけど、ここが「⽬的地」になり、「ここに泊まりたい」と思わせる唯⼀無⼆の価値が⽣まれるんです。おいしいご飯を提供する宿は他にもたくさんあるので、それだけでは弱いと思っていて、でもそこに作家の絵が飾られることで“⽬で栄養がとれる”場所になる。それがアーティストインレジデンスのありがたいところだなぁと思いました。
この取り組みのおかげで、多分ホテルの資産価値は確実に上がっていると思います。この取り組みが広がってほしいと思う反⾯…正直あまり広がってほしくない気持ちもありますね(笑)。





西谷直子 Naoko Nishitani

東京生まれ
武蔵野美術大学短期大学部 生活デザイン学科専攻科卒業
‘94.04 グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
‘94.10 個展『壁沿いの路』 ピンポイントギャラリー
‘95.06 個展『眠る人々』 ガーディアンガーデン

現在、制作・展示出品のかたわら、音楽とのコラボを通して体験者とともに作品を作るライブペイントの試みを重ねている。

https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=936313


アグリテル(運営会社:株式会社 terra)

HP: https://agritel-kyushu.com/


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