
「農業体験」と「宿泊」を掛け合わせ、“最⾼にうまい”を体感できる宿泊施設を運営する株式会社Terra様とヨロコビtoとのコラボにより、今回初めて宮崎県・えびの市での「アーティストインレジデンス」が実現しました。
2025年5⽉、1名の作家が宿泊施設「アグリテル」の離れに約1か⽉滞在し、制作を⾏いました。その後1年間、作品は「アグリテル」に展⽰されます。
第3弾では、作家を受け⼊れてくださった株式会社Terra代表の池内学さん・優希さんご夫妻にお話を伺い、そのインタビューをご紹介します。

―アーティストインレジデンスが実現した経緯を教えてください。
滞在制作のお話をヨロコビto代表の柏本さんからお聞きして、「めっちゃ⾯⽩そうだな」と思って、弊社の宿泊施設・アグリテルでもできないかと話したところ、柏本さんが前向きに「できる可能性がありますよ」と⾔ってくださったことがすごく嬉しくて。そこから実現に向けて進めていった感じです。
もう1つのきっかけは、Terraのホームページやポスターで⻄⾕さんの作品を使わせていただいていることです。その作品がどれもすごく素敵で、そんな作家さんをうちでお迎えできたらすごく光栄だなと思いました。


―滞在中の⻄⾕さんのご様⼦はいかがでしたか?
優希さん:えびのにお越しいただいてすぐ、⼀緒にランチに⾏きました。そのあとは⾃由気ままにえびのを拠点に近隣地域まで⾜を伸ばして、⼿つかずの⾃然に触れながら制作活動を⾏っていただきました。⻄⾕さんはとても物腰が柔らかくて、描かれている絵の雰囲気にぴったりの⼥性だなと思いました。
池内さん:初⽇に⾏ったカレー屋さんで、けっこうプライベートな話をしちゃったんですよね。息⼦さんも来られていたので、息⼦さんのことや、⻄⾕さんの⽣い⽴ちの話も聞かせてもらいました。「すげぇ⼤変だったんだな」っていう話もあって。柏本さんの話でも盛り上がりました。
滞在中は、⻄⾕さんのFacebookの投稿を⾒ながら「あ、今ここいるんだ」って思ってました。⻄⾕さんが海で楽しそうにしている写真を⾒て「めちゃくちゃいいですね」ってコメントしたら、「仕事します。すみません」って返ってきて(笑)。
でもね、「描かなきゃ」「仕事だ、納品しなきゃ」っていう気持ちにはなって欲しくなかったんです。とにかくのびのび過ごしてほしかった。やっぱり「居⼼地よかった」って思ってもらいたい、というのがすごくあったんですよね。でもいざ作品を⾒たら「めちゃくちゃ描いてたんじゃん、めっちゃ仕事してる!」って思いました(笑)。

―⻄⾕さんの作品の魅⼒についてはどう感じられましたか?
池内さん:わかりやすい絵ではなくて、ちょっとカオスな感じもあるんですけど、でもそれが癖になるんですよね。それがすごく好きになりました。
優希さん:⼀⾒すると普通の⾵景画なんですけど、よく⾒るとその中にシュールな動物がいたり、⼈間がいたり、全然違う世界のいきものやモチーフが混ぜこぜに描かれていて。その世界観がとっても⾯⽩くて好きですね。えびのの⾃然にはない⾊が⼊っていたりするんですけど、それがなぜか⾃然に溶け込んでいて、そこも魅⼒だなと思っています。
―滞在中の作品の中で、お⼆⼈のお気に⼊りはありますか?
優希さん:松形邸の⼤⽊を描いた作品です。松⽅邸のシンボリックな⽊を、こんなにカラフルに描いてもらえるとは全く想像していませんでした。
池内様:僕はこの“トマトちゃん”ですね。トマト農家さんがこの作品を⾒たら、きっと涙を流して喜ぶと思ったんです。「あなたのトマトが美味しくて、こんな素敵な作品に描かれましたよ」ってしっかり伝えられるのが嬉しくて。この絵が巻き起こすインパクトって、すごく⼤きいと思っています。


―アーティストインレジデンスで、滞在作家に望むことは?
池内さん:絵を描いてほしい以上に、まず“整ってほしい”という思いがありました。えびのに来ることで、⼼が落ち着いたり、⾃分を取り戻してもらえたらいいなと。やっぱり都会の⽣活とは時間の進み⽅が全然違うと思うんですよ。普段は「ちゃん納品しないと」とか、締め切りに追われることも多いと思うんですけど、ぶっちゃけ僕はここではそれを守らなくていいと思っていて。 作品をたくさん描いてもらうよりも、とにかく“ゆったり過ごしてほしい”という気持ちが⼀番でしたね。
優希さん:「えびのの⾃然」から受けるインスピレーションで、思うがままに⾃由に描いていただいて、どんな作品ができるのかなって、すごく楽しみにしてたんですよね。実際に完成した作品は本当にカラフルで、⾒ていて楽しい絵ばかりで…。えびのの⾵景なんだけど、まるで異世界のようで。⻄⾕さんの⽬には、こういうふうに映ったんだなぁと新鮮で驚きました。

―お⼆⼈にとって、えびのの魅⼒は?
池内さん:妻は去年の夏まで、えびのに全く来ようとしなかったんですよ。
優希さん:本当に興味がなかったんです(笑)。でも⼀度来てみたら、⾃然の綺麗さとか、のんびりした雰囲気がすごくいいなぁと思って。⼈ものんびりして、ポジティブで明るくて、細かいことに気にしないおおらかさがあるんです。
あとはご飯のおいしさですね。⽔がきれいで、お⽶も野菜もおいしい。しかもそれを作っている農家さんの顔も知っているから、余計にそのおいしさが際⽴つんだと思います。それから、観光地化されてないところも好きです。これだけ⾃然が豊かで天然の“観光資源”みたいなものがあるのに、リゾート感はなくて、⽇常の中に⾃然が溶け込んいる。それが魅⼒だと思います。


池内さん:そうですね。えびのは、お客さんとサービス提供者とを分けていないと感じがすごくあるんです。観光地って、「来た⼈が⾒たい景⾊」を作っているところが結構多いと思うんですけど、えびのはそうじゃない。⾃然体で「来たらいいじゃないですか」みたいな雰囲気なんですよ。地元の⼈も登⼭などで⾃然を楽しんでいて、⾃分たちで町をつくっている。だから無理してキャパ以上に⼈を受け⼊れようとしない。がめつくない、というか。「まあ、できることはやりましょうよ」という空気があるんですよね。東京のようにシティ化していくと、それは資源になっていくけれど、でもそれだけじゃ⾜りない。その“ゆるさ”が、えびのの魅⼒だと思います。
優希さん:そういう意味では、アグリテル⾃体もすごく⾃然体なんですよね。お客さんも、⼀緒にこの宿を育ててくれている感じ。今回の⻄⾕さんのアーティストインレジデンスも、その流れの中の⼀つの位置づけとしてあるんじゃないかなと思うんですね。

―実際に作家を受け⼊れていただき、アーティストインレジデンスについて感じていることを教えてください。
池内さん:最初の滞在作家さんが⻄⾕さんで本当によかったなと思っています。もっとたくさんの作家さんに来てほしいですね。経営者としても、画家の⽅々への物品提供や宿泊・レンタカーの提供は、経済的にも⼗分ペイすると思っています。でもそれ以上に、満⾜度がとても⾼いんです。やる価値がある取り組みだと感じています。
優希さん:ここにはいろんな地域から不特定多数のお客さまが来られるので、来るたびに違う作家の作品が飾られていたらそれも楽しみのひとつになると思うんです。季節ごとに施設の彩りが変わることにで、場所の魅⼒がもっと広がっていくんじゃないかなと感じています。

池内さん:アーティストインレジデンスは、いろんな地⽅で有効な打ち⼿になると思っています。作家さんがここで過ごしたという「事実」そのものが重要なんです。滞在の時間が作家の⾎⾁になっていくし、ファンの⽅にとっては「その作家が過ごした場所に⾏きたい」と思うきっかけになる。“デスティネーション戦略”と呼んでいるんですけど、ここが「⽬的地」になり、「ここに泊まりたい」と思わせる唯⼀無⼆の価値が⽣まれるんです。おいしいご飯を提供する宿は他にもたくさんあるので、それだけでは弱いと思っていて、でもそこに作家の絵が飾られることで“⽬で栄養がとれる”場所になる。それがアーティストインレジデンスのありがたいところだなぁと思いました。
この取り組みのおかげで、多分ホテルの資産価値は確実に上がっていると思います。この取り組みが広がってほしいと思う反⾯…正直あまり広がってほしくない気持ちもありますね(笑)。



西谷直子 Naoko Nishitani
東京生まれ
武蔵野美術大学短期大学部 生活デザイン学科専攻科卒業
‘94.04 グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
‘94.10 個展『壁沿いの路』 ピンポイントギャラリー
‘95.06 個展『眠る人々』 ガーディアンガーデン
現在、制作・展示出品のかたわら、音楽とのコラボを通して体験者とともに作品を作るライブペイントの試みを重ねている。
https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=936313
アーティストインレジデンス 宮崎・えびの市で初開催!ヨロコビto×アグリテル 2025年度レポートVol.2 〜⻄⾕さん滞在中の制作編〜

「農業体験」と「宿泊」を掛け合わせ、“最⾼にうまい”を体感できる宿泊施設を運営する株式会社Terra様とヨロコビtoとのコラボにより、今回初めて宮崎県・えびの市での「アーティストインレジデンス」が実現しました。
2025年5⽉、1名の作家が宿泊施設「アグリテル」の離れに約1か⽉滞在し、制作を⾏いました。その後1年間、作品は「アグリテル」に展⽰されます。
今回は、滞在作家・⻄⾕直⼦さんと、作家を受け⼊れてくださった株式会社Terra代表の池内学さん・優希さんご夫妻にお話を伺いました。
第2弾では、⻄⾕直⼦さんが滞在中に制作された作品について語っていただいたインタビューをご紹介します。

―滞在中の制作について教えてください。まず、こちらはどういう作品ですか?

朝、松形邸の離れで制作をしていると、南側の窓の外からウグイスの声が聞こえてきたんです。それから、カラスもカーカーではなくコロコロという柔らかい鳴き声でご機嫌に鳴いていて…。1⽇中いろんな⿃の声が聞こえてきました。「どこから聞こえてくるのかな」と思って窓の外を⾒ると、この⼤⽊があって、枝のあちこちに違う⿃が来ては⾶んでいって。その様⼦に感動して、作品にしたいなと思いました。
この⼤⽊は朽ちかけてはいるんですけど、すごくたくましく⽣きていて。枝ぶりもまるでジェットコースターのように上下にうねっていて、それにすっかり魅了され、⽊が与えるエネルギーを⼤きい絵にしたいと思って制作しました。
えびのの⾃然は何百⾊ものきれいな緑⾊でできているんですが、松形邸の中はちょっと暗くて、それをそのまま表現するのは無理かなと思って(笑)。それであえて補⾊を選んで、カラフルに表現しました。
―こちらはどのような作品ですか?

池内さんからトマトを⼤量にいただいたんですが、それがあんまりにもおいしくて、「これはもう描かないと駄⽬だ!」と思ったんです。トマトのおいしさを、こんなごちそうがあるんだよって伝えたくて描きました。本当に絶品で、宿に遊びに来た⼦どもたちも、そのおいしさに⼤興奮していました。
―この絵に描かれているのはサギですか?

そうですね、シラサギです。畑を進むトラクターの後ろをシラサギがちょこちょこついて歩いていて、その様⼦がすごくほっこりして可愛くて。「畑にいるシラサギが描きたい」と思ったんです。
それから、宮崎県には「かりこ坊」という妖怪がいて、⼦どもにしか⾒えない座敷わらしみたいな妖怪だと⾔われているんですけど、もしかしたらその「かりこ坊」は⼈の形じゃなくて、⿃や野菜の形かもしれないな…と想像しながら描きました。
―こちらの作品について教えてください。

えびのでは、ウグイスが本当に綺麗な声で1日中鳴いていて。私、滞在中によくウグイスと遊んでいたんですよ。ホーホケキョやケキョケキョなどいろんな鳴き声で鳴いてくれるんですけど、こちらが⼝笛で真似すると、「いやいや、そうじゃないよ」というみたいに必ず鳴き返してくれるのが可愛くて、ウグイスを描きたいなと思いました。ちょうどピアニストの⿂住さんとのライブペイントのイベントが終わった後だったので、「ピアニスト・ウグイス」ということで、歌って弾けるウグイスを描きました。
―このミニキャンバスのシリーズはどういう作品ですか?


このシリーズは、えびのの花たちが本当に可愛くて描いた作品です。私が住んでいる府中市でも⾒かける花ではあるんですけど、なぜかここの花たちの⽅がとても幸せそうに⾒えて。その幸せそうな感じを素直に描きたくて絵にしました。
(画像①)にはハルジオンを、(画像②)にはクローバーを描きました。(画像③)は松形邸の庭に咲くサザンカやツツジに⿊いチョウが⾶んできて、その⾚⾊と⿊⾊のコントラストが綺麗だな、と思い作品に表現しました。
(画像④)は、宮崎に来たとき最初に⾒た、緑の中をひらひらと泳ぐ鯉のぼりがすごく綺麗で、その印象を描きたいなぁと思い絵にしました。(画像⑤)はタンポポなんですけど、綿⽑に⾍たちが⾶んできているのが可愛いくて、⼦どもが⾍の気持ちになって綿⽑を持っている様⼦を描きました。
―この作品はどういう作品ですか?

えびのに来て「素敵、楽しい」と思ったものを全部描こうと思いました。
(画像⑥)は、えびので⾷べてあまりのおいしさに感動したトマトです。それから⽇向夏、ほうれん草、キノコなど、えびののおいしいお野菜たちをたくさん描きました。(画像⑦)はキクラゲが⽊を持ち上げて歩いているところです。このキクラゲは荷物を持っているつもりになっているけど、実は⿃が⼀緒に運んでくれているんですよ。


それから朝晩に鳴る梵鐘や、お払いしながら空を⾶ぶ⽊の神様、祝福の踊りをしている「⽥の神さあ」、えびののベトナム料理で⼀⼈で頑張っている店主とその店の巨⼤なバラ…。
この⼟地はかつて⾺の産地として有名だったと聞いて、緑の中に戯れる⾺を描きたいと思い、この作品にも描き⼊れました。霧島アートの森でやっていた⾺の放牧の⾵景がすごく良かったんですよね。
そしてこれは「池内さんですか?」と⾔われたんですけど、そういうつもりではなく、「だいだらぼっち」のような巨⼈の妖怪で、⽊の守り神みたいなものをイメージして描きました。

私が宮崎にきて最初に感じたのが「⼭がポコポコまあるい」という印象だったんです。「なんてかわいい形の⼭なんだ!」と思い、絵にしました。以前アグリテルさんのHPに使っていただいた作品も、ポコポコした⼭と、その⼀⼭⼀⼭を⾃分の⼭として管理している個性豊かな⼈たちを描いたものだったんです。その⼈たちは⼭を⽀配するのではなく、それぞれの豊かな⾊合いの⼟地を⼤事にしながら楽しく暮らしていて。今回もその様⼦を表現できればと思いました。

―滞在制作は今までも経験があると思いますが、今回の滞在はいかがでしたか?
とにかく元気をいただきました。私にとって絵を描くことは好きなことなので、これまでも苦痛に感じたことは⼀度もなかったんですけど、今回の滞在制作はなんとも⾔えない開放感で、⼿探りしながら描くような感じが⼀切なかったんです。エネルギーをもらって、それをそのまま⼦どもになったような気持ちで素直に描いてみてもいいんだ、と思えました。それが⼀番⼤きなことですね。ここ、えびのの⾃然の中でゆっくり過ごせたことや、⽇常⽣活から切り離された環境の影響もあったと思います。絵にも「⼒」や「元気」が宿ったんじゃないかな、と思っています。願いも込めてですけど。⾒てくださった⽅から「元気が出ます」と⾔っていただけて、本当に嬉しかったですね。
今回の滞在を通して、本来の「絵を描く喜び」を再認識できました。えびのの⾃然の中で、⾃分⾃⾝もその⼀部になって、感じたままに絵を描く。うまく⾔葉では⾔い表せられないのですが、「観念的に描く」のではなくて、「素直に描く」ということを⼤切にしたいなと強く思いました。

西谷直子 Naoko Nishitani
東京生まれ
武蔵野美術大学短期大学部 生活デザイン学科専攻科卒業
‘94.04 グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
‘94.10 個展『壁沿いの路』 ピンポイントギャラリー
‘95.06 個展『眠る人々』 ガーディアンガーデン
現在、制作・展示出品のかたわら、音楽とのコラボを通して体験者とともに作品を作るライブペイントの試みを重ねている。
https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=936313
アーティストインレジデンス 宮崎・えびの市で初開催!ヨロコビto×アグリテル 2025年度レポートVol.1 〜⻄⾕さん滞在中の⽣活編〜

「農業体験」と「宿泊」を掛け合わせ、“最⾼にうまい”を体感できる宿泊施設を運営する株式会社Terra様とヨロコビtoとのコラボにより、今回初めて宮崎県・えびの市での「アーティストインレジデンス」が実現しました。
2025年5⽉、1名の作家が宿泊施設「アグリテル」の離れに約1か⽉滞在し、制作を⾏いました。その後1年間、作品は「アグリテル」に展⽰されます。
今回は、滞在作家・⻄⾕直⼦さんと、作家を受け⼊れてくださった株式会社Terra代表の池内学さん・優希さんご夫妻にお話を伺いました。
第1弾では、⻄⾕直⼦さんに滞在中の⽣活について語っていただいたインタビューをご紹介します。

滞在作家の⻄⾕直⼦さん
―滞在制作の環境について教えてください。
アグリテルさんのメイン施設は廃校を改装した宿泊所なのですが、私はそこから⾞で15分ほどの古⺠家型の宿泊施設、「松形邸」に滞在しました。⼩学⽣のサッカーチームも泊まれるくらい⼤きな⼀軒家で、制作もその離れで⾏なっていました。
松形邸は「落ち着く空間」で、どこで描こうかなと思って、家の中をうろうろして、あちこちにパネルを置いてみたりしました。夜は室内でも暗くなるので、電球をひとつ買い⾜しましたが、やっぱり夜に描くのは難しく、朝の光で描いて、⽇が暮れたらもう辞めるっていう、そういう本来の⽣活リズムに戻れた気がします。でも、ついつい夜も⼿を⼊れたくなって。翌朝⾒て「えっ、ちょっとこんな⾊じゃなかったはずなんだけど」って驚くことはありました(笑)。

廃校を改装した宿泊施設

―滞在中の⼀⽇のルーティンは?
東京では割と夜型ですが、滞在中は⾃然と早起きになって、6時半ごろには⾃然に⽬が覚めていました。お湯を沸かして、前⽇の晩ごはんを温め直して簡単に朝⾷を済ませ、天気がいい⽇は近くの⼟⼿や川まで歩いたりしました。
歩いて⾏ける距離にある「飯野城跡」にもよく⾏きました。 すごく眺めがよくて、朝に⾏くと気持ちがいいんです。昨⽇まで咲いていた花が数⽇後にはまったく違う姿に変わり、筍が「あれ!?こんなに⼤きかったっけ!」っていうぐらい伸び、同じ場所でも1週間で⾃然が劇的に変わるんですよね。緑の⾊合いも⽇によって違うし、時間帯によって苔の輝き⽅が変わる。とにかく緑が輝いていて、まるで緑が「元気!元気!」って歌ってるような感じがして、とても気持ちよかったです。
制作するかどうかは、その⽇の「お天気次第」という感じでした。晴れて明るい⽇はすぐ描き始めて、朝からお天気が悪かったりすると、すぐ観光モードに気持ちを切り替えて、池内さんに教えていただいた場所に赴き、⾏く先々でたくさん収穫がありました。

滞在先の古⺠家で制作する⻄⾕さん
―滞在したえびの市で印象に残っている場所はありますか?
最初に⾏った湧⽔池は、⽔の美しさに思わず「わー!」って声が出ました。あと「鶴丸温泉」ですね。お湯が茶⾊くて⿊っぽい温泉で、昔ながらのおばちゃんたちが集う場所なんですけど、温泉好きが全国から来そうな、泉質のよい温泉でした。
それから「陣の池」。えびの周辺は綺麗な池がいくつかあるのですが、あの景観は特別で本当に⾏ってよかったと思える場所です。私は⽔を⾒るのが好きなので、ずっと眺めていられちゃうんですよね。透明な⽔って底の深さが計り知れなくて、浮かんでいるものの影が⽔底で別の形になって動く様⼦が綺麗で癒されるんです。⽔⾯をずっと眺めていると何⾊もの⾊が⾒えてきて、「これをどう混ぜたら絵に表現できるんだろう」と考えたりもします。
それから、⽔という「⾒えない空気」の中に⽣き物が⾏き交っているのを⾒ていると、別の世界を覗いているみたいで⾯⽩いんです。しかもその⽔が⾃分の体の7〜8割を占めていると思うと、不思議なつながりを感じられて…。本当に飽きないですね。


―アグリテルの池内夫妻との関わりはありましたか?お⼆⼈の印象は?
池内ご夫妻には滞在中、数々お世話になりました。滞在早々にえびのの美味しいカレー屋さんに誘っていただいて、そこで初めてお⼆⼈とお話しました。その後はアグリテルで顔を合わせた時に⾔葉を交わすこともありましたし、池内さんから「えびので⾏くべきオススメのスポット」が指令のようにメールで届いて、それを⼀⽣懸命こなしました(笑)。
それから、おいしい野菜もいただきました。⼀度、⽩菜ぐらいの巨⼤なニラを⼤量にくださったことがあって、普通だったら「⾷べきれないから、これだけいただきます。」でよかったんですけど、「池内さんが⾷えって⾔うんだったら⾷べられるのかな」と思って。結果、全部⾷べたんですよ。四半世紀分のニラを⾷べ尽くしました。初めてニラを麺類のようにすすりましたよ(笑)。⼤きな池内さんが運ぶ⼤量のトマトやニラは強烈なインパクトで、やはり絵にも登場してしまいました。
池内さんは、私にとっては「⽥の神さあ」(豊作をもたらす九州の神)です。地元にドンっといて、いろんなものをニコニコしながら⾒ていて。ちょっと厳しいこともやるけれど、この⼟地を愛する守り神のような存在です。優希さんも守り神。⼥神様ですね。チャーミングでかわいらしくて。意識的ではないんですけど、私の絵に登場する横顔の⼥の⼦が、どこか優希さん似ているような気がして。池内さんに 「この絵、かわいいですね」って⾔われた時は、あぁそういうことね、と思いました(笑)。

―地域の⽅の印象は?
とにかく出会う⼈みんな気さくで明るくて、フレンドリーなんですよね。地域の⽅々が本当に穏やかで、「⽥の神さあ」の⽯像のようにニコニコしていて。気づけばこちらまでゆったりしてしまう感じでした。神社に⾏くたびに思ったんですけど、狛⽝や仁王像まで可愛いんですよね。威嚇するのではなく、楽しげにこちらを⾒守ってるみたいで、受け⼊れてくれている感じなんですよ。悪いことできないなぁって思いましたね(笑)。 この⼟地の⼈も同じです。寛容なんですよね。


―滞在中に実施された「ライブペインティング」のイベントについて教えてください。
友⼈のピアニスト・魚住幸正さんと、クラシック演奏に合わせて即興で描くライブペインティングを⾏いました。事前に知識で準備して挑むのではなく、⾳に浸りながら⾃然と⽣まれてくるイメージを作品にしました。
⿂住さんとは今回が2回⽬のイベントで、まさかこの地で開催できると思っていなかったんですけど、絶妙なタイミングが重なり実現しました。⾳源を聞いてくださったお店のオーナーさんが「こんなピアニストさんが来てくれるなら、いろんな⼈に声をかけたい!」と、都城市の⼤きな⾳楽ホールの折込チラシに今回のお知らせを⼊れてくださり、お店のお得意さんに⽚っ端から声をかけてくださったんです。おかげさまで2⽇間ともほぼ満席という想定以上の盛況になりました。
イベント後にはオーナーさんに⾷事会を開いていただいて、お客様とお酒を飲みながら語り合い、地元の話もいろいろ聞けて、めちゃくちゃ楽しい時間になりました。

―アグリテルでの「作品のお披露⽬会」の印象はいかがでしたか?
アグリテルでは、滞在中に制作した作品のお披露⽬会も開いていただきました。
私の友⼈のお茶の先⽣や整体師の⽅が⼀緒にイベントを盛り上げてくださり、えびのに住んでいる⽅々や⼦どもたち、アグリテルに滞在中の⽅、旅⾏で近くまで来られている⽅など、いろんな⽅がお越しくださいました。⿂住さんとのイベントに来てくださった⽅もお披露⽬会にも⾜を運んでくださって、つながりを感じて嬉しくなりました。
お客様に作品をじっくり⾒てもらいながら直接お話できたのも楽しかったですし、東京から泊まりに来ていた⽅とも出会えて「東京とえびのがこうしてつながっているんだなぁ」と実感できました。

Vol.2(滞在中の制作編)に続く。
次回は、⻄⾕さんがえびのの⾃然の中で描き上げた作品たちに迫ります。どんなモチーフを選び、どんな思いを込めたのかーー作品に隠されたストーリーをたっぷりお届けします。どうぞお楽しみに!
西谷直子 Naoko Nishitani
東京生まれ
武蔵野美術大学短期大学部 生活デザイン学科専攻科卒業
‘94.04 グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
‘94.10 個展『壁沿いの路』 ピンポイントギャラリー
‘95.06 個展『眠る人々』 ガーディアンガーデン
現在、制作・展示出品のかたわら、音楽とのコラボを通して体験者とともに作品を作るライブペイントの試みを重ねている。
https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=936313
「線律」

【4月のカフェ展示】
ヨロコビtoレンタルカフェ
関口いちろ展『線律』
2026年4月1日(水)〜4月12日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※4月6日(月)は店舗休業日
「線律(せんりつ)」は、旋律と同じ響きをもつ造語です。
滲みやすい紙にひいた線の上には、私なりのリズムでにじみの粒が現れます。改めて見つめてみると、それらは音符のようでもあり、また、モールス信号のようにも感じられました。にじみの印は、線の呼吸のように、かすかな節をつくります。線の流れにもまた、見えない 律動があるのではないかと考えています。
本展では、その律動を「線の旋律」として、さまざまなモチーフで線画を描きました。(関口いちろ)
HP:https://satuba2.wixsite.com/ichirottsekiguchi
Instagram:https://www.instagram.com/ichirott_sekiguchi/
投稿日:
「春光」

ミヤギユカリ展『春光』
2026年3月11日(水)〜3月29日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※月曜定休
▶︎【オンラインショップ】ミヤギユカリ展の一部の作品の販売・公開はこちら
春の光の中で、馬はただ立っている。走るためでも、力を誇るためでもなく、静かにそこに在るものとして。本展では、ミヤギユカリが描くうちに惹かれていったという馬の姿のほか、同じ季節の気配を宿す花や鳥、動物たちを描いた作品を発表する。立ち止まることで、ふと見えてくるものを感じていただけたら、と作者は語る。ワトソン紙に滲む水彩絵の具やブロンズの粒子が、春の光を受け止めながら、今ここに生きているものの呼吸を、凛とした佇まいへと描き出す。
【作家在廊予定】
※都合により在廊日時は変更になる場合がございます。
※追加在廊予定については決まり次第お知らせいたします。
・3月11日(水) 12:00-17:00
・3月14日(土) 14:00-17:00
・3月19日(木) 15:00-18:00
・3月22日(日) 14:00-17:00
・3月29日(日) 15:00-19:00
投稿日:
「さあ窓をあけて」

タムロアヤノ展『さあ窓を開けて』
2026年4月1日(水)〜4月19日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※月曜定休
たくさんの部屋を描いてきた。安心できる場所をつくるように、色を重ねて。けれどある日窓の外が気になった。木々が揺れる。風を感じる。
『さあ窓をあけて』展では心が外へ向かいはじめる瞬間を描いたタムロアヤノの作品を展示する。「穏やかで心地よい色の重なりが誰かの暮らしにそっと寄り添えますように。」人の気配や記憶、そしてやわらかな光が静かに息づく作品たちによって、あなたの心もひらかれていく。
投稿日:
「Lovely stays with me.」

河嶋菜々展『Lovely stays with me.』
2026年4月22日(水)〜5月10日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※月曜定休
※祝日の月曜も休廊します。
河嶋菜々にとって“らぶり〜”とは、ただ「かわいい」だけではない。やさしく、少しおかしく、小さな違和感を含みながら、ふと心をとめる光のようなものだという。本展では、自身の姿を重ねた赤い帽子のナナ、かつて飼っていたうさぎのバニラ、ちょうちょや花などをモチーフに、岩絵具や水干絵具で描いた作品を発表する。岩絵具の粒子のきらめきも、色と色がすれ違いながら呼吸する気配も、すべてらぶり〜だ。らぶり〜は探すものではなく、かたちを変えながらそばにあり続けるもの。この絵たちが、誰かの中の“そばにいた感覚”をそっと呼び起こせたら嬉しい、と作家は話す。
投稿日:
「東京工芸大学大学院 遠藤研究室 紙版画作品展」

ヨロコビtoレンタルカフェ
東京工芸大学 大学院 芸術学研究科
メディアアート専攻 デザインメディア領域
『遠藤研究室 紙版画作品展』
2026年2月24日(火)〜3月15日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※店舗休業日:3/2(月)、3/9(月)、3/10(火)
【参加作家】
遠藤拓人
井上知也
宝積一蔵
清水拓磨
只野雅人
なかやまきこ
【作家在廊予定】
※在廊日時は都合により変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
・2月24日(火)15:00-19:00(なかやまきこ)
・2月26日(木)12:00-17:00(只野雅人)
・2月28日(土)時間未定(全員在廊)
・3月3日(火)13:00-17:00(井上知也)
・3月5日(木)12:00-17:00(只野雅人)
・3月7日(土)13:00-18:00(清水拓磨)
・3月8日(日)12:00-18:00(宝積一蔵)
・3月11日(水)13:00-18:00(なかやまきこ)
・3月12日(木)13:00-18:00(清水拓磨)
・3月13日(金)13:00-17:00(井上知也)
・3月14日(土)13:00-19:00(宝積一蔵)
投稿日:
「Shin Shin Shin」

津々井良展『Shin Shin Shin 』
2026年2月18日(水)〜3月8日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
※月曜定休
※祝日の月曜も休廊します。
手を動かしていると、心に森が浮かびあがる。
森へ帰ろう。森へ行こう。
津々井良が本展に向けて制作したのは、白い函の作品。英国アーノルド社製の木の板に絵が描かれた知育玩具をはじめ、古いカタログや雑誌、手紙や切手などの素材に、ペインティングや陶磁やプラスティックのマテリアルを重ね、手製の函の中にコラージュした。加えて、古書店で出会った津々井の誕生年1957年発行の木の本の頁を解き、その上に森の精霊のドローイングを幾枚も描いた。展示空間に、鑑賞者の心に、深々とした森が新たに現れることを、津々井は願っている。
【作家在廊予定】
※在廊日時は都合により変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
※追加在廊予定は決まり次第随時お知らせします。
・3月 4日(水) 13:00-16:00
・3月 5日(木) 15:00-18:00
・3月 6日(金) 13:00-16:00
・3月 7日(土) 13:00-19:00
・3月 8日(日) 13:00-19:00
投稿日:
「鳥日和 」

マツダカヨ展『鳥日和』
2026年1月28日(水)〜2月15日(日)
平日11:30〜19:30 土日祝日11:00〜19:30
ふわふわの羽毛や硬質なクチバシ、さえずり、下瞼、過眼線のかわいらしさ…。数え切れないほどの美点を挙げながら「そんなことが理由でもなく、鳥が好きです。」と作家マツダカヨは語る。多くの魅力を秘めたこの生き物が密やかに、ひたむきに、ご機嫌に暮らしていてほしいと願いを込め、丁寧に色をのせる。冬鳥が訪れる季節。“鳥は白い息を吐くのかな、寒くないのかな”。そんな思いに故郷・岩手のたくましい木々の記憶を重ねながら、鳥が暮らす冬の森を描く。しんとした空気のなかに小さなぬくもりが灯る。
【作家在廊予定】
※在廊日時は都合により変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
・1月28日(水) 12:00-16:00
・2月14日(土) 12:00-17:00
・2月15日(日) 12:00-17:00
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