ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」2024年度レポートVol.3


沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」も今回で3回目になりました。1⽉から3⽉までの間で約2ヶ⽉間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展⽰いただく企画です。
前回に続き、今回は作家を受け⼊れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝⼀様のインタビューを紹介します。




-アーティストインレジデンスの企画が実現した経緯を教えてください。

ホルトノキは、私と妻が東京の仕事を退職し、第⼆の⼈生を過ごすためにつくったホテル、レストラン、ガーデン、農園による多目的施設です。私が勤務していた外資系ブランドコンサルティング会社は、早くからアーティストの支援活動に熱心で、私自身も障害者支援組織や学術研究組織へのプロボノ活動の企画や実施に関わってきました。このプログラムの背景にはその経験がありました。
もう一つのきっかけは、若い頃に大乗寺(兵庫県香美町)で見た円山応挙の荘重な襖絵の記憶です。京都から遠く離れた山陰のひなびた寺に 「なぜあの応挙の絵が。」 と驚くとともに、江戸時代から日本の作家が志のあるパトロンに支援されていたことに感銘を受けました。沖縄での事業を始めた今、若手作家をホルトノキに招き、南国沖縄の風土に触れてもらう機会をつくることは創作へのよい刺激となるかもしれないと考えました。

この企画を実現するにあたり、前職で一緒に仕事をしたことのあるヨロコビtoギャラリーの柏本さんが思い浮かびました。西荻窪でギャラリーを運営している彼が適任だと思い、協力を依頼したところ共感いただき、実現にこぎ着けました。今では新年が明けると、「今回の作家さんはどんな方だろう。」と楽しみな年中行事を待つような気分です。



-植田さんの印象と滞在中の様子をお聞かせください。

第1回は岐阜在住の女性作家、第2回は東京在住の男性作家、そして今回は奈良在住の女性作家を受け入れました。植田さんは活動的な方で、軽自動車を借りて沖縄本島を巡られていました。ホルトノキの宿泊客の皆さまとも積極的に交流され、一緒にお酒を飲んだりお話しされたりする機会もありました。看板犬ジュネの散歩を手伝っていただくことで、近隣の方とも自然に仲良くなられていたようです。沖縄で暮らすという体験を通じて、この地の風土が作家の作品にどう表現されるかを期待していますが、制作についてはそっと見守るだけで一切口出しはしていません。



-植田さんの作品をご覧いただいた感想は?

特に伊江島の作品が素晴らしいと思いました。ヒカゲヘゴやガジュマルなど、沖縄ならではの植物や風景が作品に取り入れられている点が印象的です。アーティストインレジデンスの醍醐味は、普段見られないものを見て、それを表現することにあると思います。私も沖縄に移住した身なので、モチーフに共感する部分が多いです。インターネットによって世界中の情報に簡単にアクセスできる時代になりましたが、五感を刺激する現地での身体的な経験は若い作家さんにとってかけがいのない記憶になると信じています。


-アーティストインレジデンスを経て植田さんに期待することは?

植田さんは才能のある方なので、今後の活躍が楽しみです。人生と同様に作風も変わっていくものとすると、今回の沖縄での経験が植田さんの作風にどのように影響するのか興味深いです。良い変化があることを期待しています。



-ヨロコビtoは人々の日常にとってアートがもっと身近な存在になれば、という思いで活動しています。⽇本で作家が活躍していくことについて、何か思うことはありますか?

生きるため、作家を続けるためにはどうしてもお金が必要です。まずはアートを手にする機会が増えることが大切ですが、アートが高額で手に入りにくい現状もあります。少し無理をすれば買える価格帯で多くの人がアートを購入する風土ができると良いと思いますし、徐々にそうなっていけばいいと思います。



ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン
〒905-0209 沖縄県本部町字北⾥501-2
HP: https://www.hortonoki.com>

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ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」2024年度レポートVol.2


沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」も3回⽬になりました。1⽉から3⽉までの間で約2ヶ⽉間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展⽰いただく企画です。滞在制作いただいた作家の植⽥陽貴さんと、作家を受け⼊れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝⼀さんにお話を伺いました。 前回に続き、今回は植⽥さんに滞在中の作品についてお聞きした内容をご紹介いたします。



―滞在中に制作された作品について教えてください。

これは伊江島という美ら海側から⾒える島を描いたドローイングです。(画像❶)。 初めて見た時からすごい形の島だな、とずっと気になっていて、しつこく描きました。実際に伊江島の内部にも⾏きました。⾃転⾞を借りて島を回り、⾒えている三⾓の⼭のてっぺんにも登りました。引きで⾒ると三⾓の輪郭でしかないけど、実際に⾏ったら意外と広いし⼈も住んでいる。⼭が思ったより緑で、⽯の⼭だけど草もいっぱい⽣えている。実際に⾏ってみて引きで⾒た時の印象も変わりました。


▲(画像❶)伊江島を描いたドローイング

帰り際にフェリー乗り場の側の博物館に⼊って、そこで知った戦時中の歴史も印象的でした。この場所がそこまで占領されていたところなんだというので衝撃を受けました。普段も取材をしながら描いていますが、「知らないものは私は描けない」という思いです。知らないんだったら知らないものとして描きたいと思っています。
沖縄の海は遠浅で、途端に深くなる。それで⼿前と奥で2⾊に別れているんですよね。それを初めに聞いた時から印象的で、描きたいな、と思っていました。境⽬があるのが⾯⽩いな、と。

▲伊江島を描いたペインティング

(画像❷)この作品はヒカゲヘゴを描いた作品です。 ⾊やフォルムをいまいち⾃分の絵に引っ張ってこられなくて何枚もドローイングを描きました。てっぺんにめっちゃ枝が出るんですが、その形を追おうとすると絵としてくどくなる。⾃分の絵にどう落とし込むか悩みました。沖縄の草は⻩⾊いので、⾃分の中で嘘がないように描くとなるとやっぱり⻩⾊くする⽅が嘘がないけど、絵にならない…。普段は寒⾊系の⾊を使うことが多いので。

▲(画像❷)ヒカゲヘゴを描いたペインティング

▲ヒカゲヘゴを描いたドローイング


⼀回本物を知っているかどうかは⼤きいと思うので、葉っぱがどうなっているかをドリームセンターという熱帯植物園でちゃんと⾒てきて、現場でスケッチもしてきました(画像❸)。沖縄は冬でも眩しくて、でも⻘空というよりは⽩く眩しい感じがあるので、そういう光も表現しようとしています。



(画像❹)これはカヤックを描いた作品です。
カヤックに乗っている時点で「これを描こう」と決めていました。カヤックは元々好きなんです。⽔辺は「境界線」だと思っていて、沈んだら死んじゃう。そこに⼀⼈浮きながら境界にアクセスすることができる⼿段なので、船って存在として好きだな、と。カヤックのシリーズは「あわいに船」というタイトルをつけていて、「あわい」は「間(あいだ)」という意味です。普段から境界の「こっち側」と「あっち側」を意識して描いていて、その間を⾏き来できるものとして船のモチーフを使っていますね。沖縄ではマングローブの川で乗ったんですが、乗っている間に⼲潮になっていって、それだけ⽔位が変わるのが初めてでした。終わりには地⾯が⾒えるんじゃないかくらいの浅さで。それも⾯⽩かったです。画⾯に斜めのストロークを⼊れることで⽔が浅い感じと、川の流れを表現しました。

▲(画像❹)カヤックを描いた作品



―作品の中に登場する⼈物について教えてください。

作中に人物を描く意図としては、技術的な⾯では⼈物がいるとそこが視点となり鑑賞者が画⾯に⼊りやすいように、というのはあります。それ以外だと⼈は「⼈の形の何か」だと思って描いていて。気配を感じさせるための装置というか。⾃分が取材に⾏けるところは⼈間がいけるところでしかなくて、そこに住んでいる⼈や亡くなった⼈がいて歴史がある場所だと思うんですよ。だから画⾯にも何かしらの気配が出てきた⽅が良いかなと思うんです。描いているのは「誰」というよりは「誰か」。もしくは⼈間かどうかわからない霊的なもの、⾃分側ではないもの、他者、⽣きていない⼈、というイメージです。⼈物の⽬は最後に描くかどうかを決めているんですけど、⽬があった⽅が怖い絵ってあるじゃないですか。あまり明確に描き分けている訳じゃないですけど、不気味な絵ほど⽬があります。こっちを見ている⼈の⽅が話が通じない感じがしませんか?



―技法や画材について教えてください。

画材は油絵の具を使っていて、キャンバスサイズの作品になると筆として使っているのは刷⽑がほとんどです。ドローイングもストロークを出すところは刷⽑を使っています。刷⽑で描いてから抜いている部分もあります。この辺(画像❺)の光の表現も先に緑で潰してから絵の具とテレピン(無⾊透明で揮発性の溶き油)をタプタプにした筆で抜きながら描いています。絵の具を重ねずに描いている理由は「飽きるから」が⼀番⼤きくて。(笑) 油絵の具は薄く伸ばしても顔料が定着するので、それが好きなのもあります。伸びた感じの⾊が好きなんです。インディゴとかは伸ばすと⻘⾊が出てくるのも好き。あと筆致が出ているのも好きです。気持ち良いので。

▲(画像❺)



―ホルトノキでの制作の成果を教えてください。今後の制作へ影響はありますか?

これまでも⾊々なところで滞在制作をしましたが、沖縄は修学旅⾏以来です。沖縄の⾊は描くのが難しかったですね。でも苦労するのは楽しいんです。⼿グセじゃなくなると⾔うか。「こうやったら絵になる」と決めつけてしまいそうなところを毎回疑う。描けないものを描こうとするのはしんどいけど⾯⽩いです。ホルトノキでの経験が今すぐ作品に大きく影響するかはわからないですが、今後の制作活動の出汁にはなってくると思います。⼀回⾏った場所ってまた⾏けるような気がするんですよ。縁ができる。今回は滞在期間が⻑かったので特にその縁が強い気がして。「また来る気がするなぁ」と思っています。「親しい場所」が増えていくのは嬉しいです。




次回は、ホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝一さんのインタビューをご紹介します。Vol.3もお楽しみに!



植田陽貴 Haruki Ueda

画家。
1987年生まれ。奈良県出身在住。
女子美術大学短期大学部専攻科修了。
「”境界”とそれを越えようとすること」を主題に絵画制作を続けている。
近年は自身がその場所に立った時の、風の強さや光の眩しさといった肌感覚を絵画表現に落とし込むことを試みている。
主な受賞歴にFACE2023 損保ジャパン日本興亜美術賞 優秀賞(2023)、 女子美 制作・研究奨励賞(2023)など。

https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=2894192

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ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」2024年度レポートVol.1


沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」も今回で3回目になりました。1⽉から3⽉までの間で約2ヶ⽉間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展⽰いただく企画です。
今回滞在制作いただいた作家の植⽥陽貴さんと、作家を受け⼊れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝⼀さんにお話を伺いました。第⼀弾として、今回は植⽥さんのインタビューをご紹介いたします。


―ホルトノキでの⽣活について教えてください。

滞在期間の前半は⾞を借りて沖縄をあちこち⾒て回りました。ホテルで飼われている⽝のジュネの散歩を頼まれることもあり、ジュネの進むがままに歩いていました。海が⾒える道の時もあるし、お友達の⽝がいるところまで⾏く時もあるし。美ら海までも歩いて⾏きました。あとはおおむね沖縄そばを⾷べていました。(笑)沖縄そばは⾃分でも調べたり、ホルトノキの滝本さんと奥さんの紀⼦さんに聞いたり、出会った⼈におすすめを聞いたりもしました。ホテルのお客さんとコミュニケーションを取る機会もありましたね。滝本さんの知⼈の⽅々が泊まりにいらしていた時に紹介していただいて、絵を描いている話をしたり沖縄そばを教えてもらったりしました。滝本さんと奥さんの紀⼦さんはフランクなんですが、絶妙な距離をとってくれる。めちゃくちゃ⼲渉はしてこないけど話しかけたら答えてくれる。優しいですね。押し付けがましくない優しさや居⼼地の良さがあります。




―ホルトノキでの制作はいかがでしたか。制作する⽇の1⽇の流れは?

制作については、ドローイングだけは毎⽇描きながら暮らしていて、3⽉に⼊ってからペインティングに取り掛かりました。ペインティングを制作する⽇は朝9時か10時に起きて、天気予報を⾒て、お湯を沸かして飲んで、晴れていたら30分くらい歩いて具志堅ビーチまで⾏っていました。そこのコンビニでコーヒーとサンドイッチを買って、ビーチで朝ご飯を買ってぼんやりしてから帰ってくる、と⾔うのをルーティーンにしていました。帰ってからゆっくりして、ドローイングを描いたり本を読んだり。結果、ペインティングの制作は夜からになることが多いです。時間を決めて、と⾔うのではなく⽣活の延⻑で描いている感じですね。⾃然体でやっていました。




▶︎Vol.2 (滞在中の作品編)に続く
次回は滞在中に制作された作品についてのインタビューをご紹介します。植⽥さんの制作にかける思いから、画材や技法などについても詳しくお聞きできました。お楽しみに!



植田陽貴 Haruki Ueda

画家。
1987年生まれ。奈良県出身在住。
女子美術大学短期大学部専攻科修了。
「”境界”とそれを越えようとすること」を主題に絵画制作を続けている。
近年は自身がその場所に立った時の、風の強さや光の眩しさといった肌感覚を絵画表現に落とし込むことを試みている。
主な受賞歴にFACE2023 損保ジャパン日本興亜美術賞 優秀賞(2023)、 女子美 制作・研究奨励賞(2023)など。

https://www.yorocobito.com/?mode=grp&gid=2894192

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ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」2023年度レポートVol.2

沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」。2回目になりました。1月から3月までの間で約2ヶ月間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展示いただく企画です。前回に続き、今回は作家を受け入れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝一様のインタビューを紹介します。


-アーティストインレジデンスの企画が実現した経緯を教えてください。

ホルトノキは私と妻が東京の仕事を退職し、第二の人生を過ごすため「自分で何かやりたい」と思い作った施設です。 勤めていたアメリカのデザイン会社では、早い時期からアーティスト支援活動をやっていました。それを見聞きしていて、実際にプロボノ活動に携わっていたという背景があります。
もう一つのきっかけは、兵庫県の大乗寺というお寺で円山応挙の襖絵を見たことです。「なんでこんなところに」というところに応挙の作品があり驚きました。そこで、江戸時代から日本のアーティストは様々なパトロンに支援を受けていたことを知りました。苦学生だった応挙を見かね、その才能を見抜いて、大乗寺が学費を支援したんです。もちろん僕はそんなに大それたことはできないけれど、自分の持っている施設を開放して、ご飯を食べてもらい、沖縄の風土に触れてもらい、作家の創作に良い影響を与えられたら良いなと思いアーティストレジデンスをやってみようかと思いました。

この企画の実現にあたり最初に思い浮かべたのが前職で一緒に仕事をした柏本さん。西荻窪でたくさん若手の画家が出入りするギャラリーをやっていると聞き、扱っている作家も良いな、と思いました。
第1回として油絵画家の中村ゆずこさんに滞在制作していただきましたが、中村さんにとっても、私にとっても新鮮な体験になりました。




-外山さんが実際に滞在された印象

ヨロコビtoのオーナーに提案いただいた作家候補から家族会議で決まったのが外山さん。作品が良く、ここで描いてもらいたいと思いました。 私もアーティストやクリエイターと付き合いがある仕事をずっとしていましたが、いろんな人がいます。作家さんを決める際、長く滞在いただくことになるので、フィーリングが合うことも大事だと思い、人となりを含めてご紹介をいただきました。外山さんはその点で間違いなく、一緒に暮らしやすい方でした。



-ヨロコビtoギャラリーのコンセプト「日常にアートを」について思うこと

作品が日常の中で楽しまれるようになるためには、商品価値としてきちんと成立して、作家が制作に集中できる状況が必要だと思います。趣味ではなく生活の糧を得るために描く方もいるし、多くの方はそれを目指している。その実現のためにも、多くの人に手が届くような絵の販売の仕方があっても良いのではないかな、と思います。そういう点でヨロコビtoの理念に共感ができるんですよね。

(画像❶) ロンドンなどで立派なギャラリーに行くと絵を展示しているだけでなく堂々と値段がついている。ただ単に見るだけでなく気に入ったものは買い求める、そういう文化があるんです。日本にはまだなかなかありません。とても有名な絵を見て、教養の一環として楽しむというところが主な状況になっています。作品を所有して楽しむという感覚が広まると良いと思います。



-沖縄の場所は滝本さんにとってどういう場所か

私は一箇所に留まるより身軽な形で三箇所くらい行ったり来たりする生活スタイルが良いなと思っています。東京にも住まいがあり二拠点みたいな感じです。東京は大好きで街には街の良さがある。沖縄のような南の島には島の良さがある。自分にとって二つ目の居場所です。

(画像❷) ホルトノキのロゴは五角形のデザインになっていて、元々ここに放棄されていた温室の骨組みをモチーフにしたものなのですが、見方によってはホームベースのようにも見えると思うんです。「疲れたな」と思った時に気軽に帰ってこられるような、そこで何か出会いがあるような場所にしたいな、と思っているんです。自分の二つ目のお気に入りの居場所であると同時に、いろんな人がエネルギーをチャージできる場所、あるいは無駄なストレスをデトックスして、本来の自分になれる居場所になると良いなと思っています。

❷ ホルトノキ ロゴ



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ヨロコビtoギャラリー × ホルトノキ@沖縄「アーティストインレジデンス」2023年度レポートVol.1

沖縄のホテル「ホルトノキ ホテル&トロピカルガーデン」様とヨロコビtoギャラリーがコラボし実現した「アーティストインレジデンス」も2回目になりました。1月から3月までの間で約2ヶ月間、1名の作家にホテルで滞在制作いただき、その後1年間ホテルのレストランにて作品を展示いただく企画です。 今回滞在制作いただいた作家の外山奏瑠様と、作家を受け入れてくださったホテル「ホルトノキ」オーナーの滝本孝一様にお話を伺いました。第一弾として、今回は外山さんのインタビューをご紹介いたします。


-今回滞在中に描かれた作品のモチーフについて教えてください

この度このような機会をいただいてせっかく沖縄に来られたので、この土地にちなんだものを描きたいなと思いました。釣竿を持った生き物を運んでいるこの鳥たちはイソヒヨドリと言います。お腹がオレンジで、頭が青い沖縄の野鳥です。朝、目が覚めてベランダの窓を開けると、東京でいうスズメや鳩、カラスのようにその辺にいるんですよ。(画像❶)


(画像❷)この作品は、美ら海水族館に併設されている熱帯ドリームセンターに行った時に、その風景からインスピレーションを受けました。実際に見た景色と厳密には異なるのですが、熱帯ドリームセンターは水辺や温室があって、いろんな植物が見られるんです。普段から水面の光やカーテンからの日差しに自然と心惹かれます。熱帯ドリームセンターでも光が当たるところに引き寄せられてしまいました。あくまで自分には光が当たっていないということも重要なんだと思います。


(画像❸)ここへ来て最初に描いた作品です。ゴーヤにも見えなくはないと思いますが(笑)
これまで緑色の作品を描くことが少なかったのですが、沖縄の緑が素敵だったので取り入れてみようと思いました。作品に登場する生き物たちは、どこからやって来るのかわからないのですが自然と生まれてきます。というよりも既に存在している、と或る世界から聞き出しながら描いているところがあって。タイトルをつけることもすごく好きなのですが、そういうのも描いている途中に絵と対話することで出てくることが多いです。

(画像❹)ユニコーンが上の方で寝ている作品です。直接沖縄に関係があるテーマではないかもしれませんが、東京の生活ではできなかった、のびのびとした環境でリラックスして絵を描けています。そういったことを絵に表せたらいいなと思いました。これだけゆったりした時間がなかったらこの絵を描けていなかったと思います。




-画材について教えてください

顔彩という日本画の固形絵の具を使っています。絵の具は顔料の粒子が集まってできているのですが、粒子の大きさがまちまちで、青い絵の具だったら粒子が大きかったり、逆に細い粒子の絵の具があったりします。顔彩の白い絵の具は胡粉と言って、貝殻を細かく磨り潰した粉が使われていて、それらを混ぜた時に起こる反応がすごく面白いんです。描く過程で絵の具の粒子が浮き沈みすることによって、独特な表現ができるのですが、全てが自分の思い通りに行くわけではないことも楽しんでいます。こういう風に描きたい!という元々の想定より、何段階も昇華された作品が目の前に現れたりして。それも絵を描くことの楽しみの一つです。



-ホルトノキでの生活はいかがでしたか?

ホルトノキでの生活は楽しいです。良いリフレッシュになりました。また来たいなと思っています。 絵を描く日はとことん描くし、逆にインプットに重きを置いて何も描かない日もありました。長尾橋ややんばるの森に行ったり…宿に帰ってそこで得たものをつまみにお酒を飲んで、そうして聞こえてきた声をヒントに絵として描き起こしていく感じです。
ホルトノキのオーナーの滝本さんと奥様とは、一緒にお酒を飲んだり沖縄の色々なところに連れて行っていただいたりと、まるで息子のように接してももらいました。



-ホルトノキでの制作と普段の制作との違いは?

沖縄にいると自分のちっぽけさをいい意味で実感します。自分一人では太刀打ちできない自然の壮大さを、青々とした海から、珊瑚の砂浜から、茂った木々から、街頭のない道路から思い知る。そうした環境に置かれている自分に、絵の力で何ができるのかを考えさせられます。 あとは、普段の制作ではどうしても「ここからここまでしか描けない」という時間の縛りがありますが、ホルトノキでは時間の縛りがありません。普段より何層も色を重ねて描くなど、時間をかけて惜しみなく制作ができます。



-ここで滞在制作したことで、ご自身の制作に変化はありそうですか?

まだ実感はありません。普段の制作でも展覧会で作品を見てもらうことで、自分では気付けなかったことを感想としていただくことを楽しみにしている節があります。なので今回も、沖縄での滞在で外山奏瑠という人間にどんな変化があったのか、展示を見ていただいた方からお話を聞くのが楽しみです。



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